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元取り壊し寸前の空き家で、毎週金曜の午後だけ買えるパン。「アレルギーでも食べられるおいしいパンを作りたい」。そんな優しさから生まれた静岡・川根本町にある「パン工房さくら」を取材しました。
川根の食材や旬の野菜がパンに
川根茶やサツマイモといった川根本町の食材を使ったパンが並ぶ「パン工房さくら」。旬の野菜や果物を使ったパンもあります。
川根本町は近隣の市街地から車で約1時間かかる、自然豊かな中山間地です。
季節ごとの食材でパンを作っているため、メニューが毎週変わります。取材した日の季節の野菜のピザは「カリフラワー」でした。
クリスマスやバレンタインデーなど、年間行事に合わせて作られるパンもあります。「川根茶のショートブレット」など焼き菓子は、ギフトにもぴったりです。
取り壊し寸前! 空き家がパン店に
パン工房さくらは、もともと藤枝市にお店がありました。もう少し広い場所へと移転し、卸売りを主にしようと考えていた時、川根本町から来る客から空き家を紹介されました。
それが川根本町元藤川にあった、取り壊し寸前の空き家です。
2018年3月に移転。周りの緑の山や茶畑と対照的な、赤い屋根が目印です。
店を切り盛りするのは、店長の津田克己さんと開店当初からのスタッフの2人です。津田さんは京都出身の元パティシエで、この道約54年。
売り場はパン工房の空いたスペースなので、とってもコンパクトですが、パン作りの様子やできたての甘い香りを、お客さんも一緒になって楽しめます。
店に入ると、その日のパンの説明を元気よくしてくれます。店の外にも手書きのメニュー看板が出ています。
なぜ金曜だけ営業することに?
他の店にパンを卸したり、イベント出店を主にやっていたパン工房さくら。以前は看板は出さず、店舗では求められれば販売をしている程度でした。
しかし毎週土曜日のイベント出店のために金曜日の夕方にパンを焼いていると、換気扇からパンの香りがするのか、決まってお客さんがパンを買い求めにやって来るようになりました。
だったら金曜に店を開けようかということになったそうです。
他の曜日は藤枝の酒蔵まで仕込みの水をくみに行ったり、材料を調達したり、仕込みをしたりで大忙し。いまのところ週1日の営業です。
パティシエからパン職人に転向したワケ
元々パティシエだった津田さんは、なぜパンに専念することにしたのでしょうか。
津田さんは自分が作る洋菓子に含まれるバターや砂糖、生クリームの食べ過ぎによる健康被害が気がかりでした。
また、食物アレルギーを持つ子供が給食でパンを食べられないことを新聞で知りました。
当時は健康やアレルギーを意識したパンはあまりなかったため、「自分たちでやるしかない」と決めたことが、パン工房さくらのはじまりです。
体に優しいパンを追求
パン工房さくらのパン生地は、菓子パン以外ほとんどが無卵、無乳製品、無油脂です。
国産小麦粉、白神こだま酵母などを使い、限られた食材でもおいしいパンを作れるよう工夫しています。
パン工房さくら・津田克己 店長:
発酵までに時間もかかるし硬くなりやすくて大変だけど、でも、そっちの方が安心でしょう
実は川根本町以外でも食べられる
パン工房さくらは、川根本町だけでなく藤枝市や静岡市などにもイベント出店しています。
出店スケジュールやパンのメニューは、パン工房さくらのインスタグラムで随時更新されているので確認してみてください。
お店の思いが詰まった天然酵母のパンは、アレルギーを持つ人だけでなく、多くの方にとってうれしいパン。
金曜の午後に川根本町まで行くことが難しい人は、ぜひイベント出店の機会を利用してみてください。
■店名 パン工房さくら
■住所 静岡県川根本町元藤川366-1
■営業日 金 (第3日曜には藤枝市の「れんげじオーガニックマーケット」に出店)
■営業時間 11:30〜19:30
■駐車場 あり 車2台分程
取材/大久保榛菜